10/15 【研究成果発表】 社会環境問題解決のための、新しいアプローチ方法「オープンチームサイエンス」を提案

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社会環境問題解決のための、新しいアプローチ方法「オープンチームサイエンス」を提案

総合地球環境学研究所コアプロジェクト、オープンチームサイエンスプロジェクトの 近藤康久准教授を中心とした研究グループは、変化の激しい現代社会において環境社会課題を解決するための新たなアプローチ「オープンチームサイエンス」を提唱し、その理論と概念を発表しました。
近年、私たちを取り巻く生活・社会環境は大きく変化しています。これまで閉鎖的であった行政データが公開され自由に扱えるようになり、市民自らIT技術を用いて課題を解決するようになりました。これまで一部の研究者による実証主義的な場であった科学の現場が、コニュニティと協働する参加型アクションリサーチへの場と変化しています。
そこで研究グループは、これらの状況を踏まえ、実際に社会環境問題への有効なアプローチ方法として何が課題として挙げられるのか、重要なポイントは何かを、下記の3つの事例を通して検証しました。
(1) オープンデータを活用した参加型調査による外来種の駆除(大分県九重町)
(2) FAIRデータを用いた水草繁茂に対応するコミュニティーの形成(滋賀県琵琶湖)
(3) チーム内におけるデータ共有による小規模水資源管理(北海道)
その結果、データの共有とその公開の程度が事例ごとに異なる状況にあることを確認しました。他方で、個々の事例の研究者は、特に初期のチーム形成における主体間の社会心理的な「へだたり(Boundary)」が問題解決の進行を妨げていることを発見しました。それは多くの場合、情報の非対称性や知識、価値観、社会経済地位、社会的影響力によって引き起こされています。
そこで研究者グループは、社会環境問題の解決のための新たなアプローチ方法として、オープンサイエンスと参加型アクションリサーチを結びつけた、「オープンチームサイエンス」という新しい概念を提唱しました。
これまでの検証を基に、著者らは
(1)異なる主体が同一の方向に向かう目標を設定する「Transcend method」
(2)周縁化された主体のエンパワーメントに注視しながら倫理的衡平性を担保する「Ethical Equity」
(3)FAIRデータの原則に基づき情報の可視化を行う「Visualization」
(4)対話の促進「Dialog」
の4つの方法によって、課題を解決する理論的な枠組みを提唱しました。
これらのアプローチによって、「へだたりを超えたつながり」が実現されることを通して「オープンチームサイエンス」という新しい研究方法を展開することができるとしました。また、この新しい概念は、これから様々な事例に照らし合わせながら発展させていくものであると提案しています。

本研究の成果は持続可能な環境のための国際誌「Current Opinion in Environmental Sustainability」に掲載されました。
論文タイトル:Interlinking open science and community-based participatory research for socio-environmental issues
著者:近藤 康久・ 宮田晃碩・池内 有為・中原 聖乃・中島健一郎・大西 秀之・大澤 剛士・太田 和彦・佐藤賢一・牛島健・Bianca Vienni Baptista・熊澤 輝一・林 和弘・村山泰啓・奥田昇・中西久枝
https://doi.org/10.1016/j.cosust.2019.07.001
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