オープンチームサイエンス・メソッドとは、オープンチームサイエンスプロジェクトが開かれた協働研究を進めるために開発したメソッドです。
プロジェクトメンバーが環境問題の解決を目指すアクションリサーチの事例を持ち寄って検討する中で、開かれた協働研究を進めるため、
いくつか注意しなければならないポイントを自己点検項目としてまとめました。
これはあくまでも自己点検項目であり、外部評価に使う点検項目ではありません。

倫理的衡平性

  • プロジェクトは先客万来であるか?(来るもの拒まず去る者追わず)
  • 疎外されている主体の参加をうながし、その潜在能力を引き出しているか?(エンパワメント)
  • 非対称(搾取)の構造を極力排除しているか?
〔 解説 〕

協働研究をリードする研究者と他の研究者もしくは社会の多様な主体の間で、倫理的衡平性を担保する必要があります。プロジェクトのメンバーシップは「千客万来」すなわちインクルーシブ(包摂的)でなければいけません。これは言い換えると「来る者拒まず、去る者追わず」ということで、プロジェクトメンバーがダイナミックに入れ替わっていくことを意味します。時には、休眠状態の人が出てくることもあるでしょう。しかし、決してその人を非難したり、排除したりしてはいけません。
協働や共創の場においては、相対的に〈声の小さい〉参加者に対するエンパワメント(能力開化、権限委譲)に留意する必要があります。疎外されている主体に気づいたら参加をうながし、その潜在能力を引き出します。また、社会経済的地位や権力の非対称性あるいは搾取の構造に気づいたら、極力それを無力化するようにします。(『環境問題を解く』より)

可視化&透明性

  • プロセスの可視化によって、プロセスの追跡可能性が確保されているか?
  • プロセスの可視化によって、プロセスの同期性が確保されているか?
  • 上記の2点によって、プロセスの透明性を確保しているか?
  • 当事者のインフォームド・コンセントをとっているか?(何をしようとしているのかということを十分に説明し、同意をえる)
  • 当事者に配慮しつつ、プロセスを公開しているか?
  • 上記の2点によって、信頼を形成しているか?
〔 解説 〕

研究プロセスの可視化による透明性の担保も重要です。これにより、プロセスを追検証することが可能になります。社会課題の解決は一回限りの社会実験ですから、科学実験のように現象を完全に再現することはできません。しかし、「あの時あの決断をしたから今この状況になったんだ」という因果をトラックバックできることは、事態が思惑通りに運ばないときに、思考停止に陥らずに軌道修正するために必要です。
さらにいえば、日々刻々と変化するプロジェクトの近況を、関係者で遅滞なく同期することも必要です。これは、コロナ禍のようにメンバー間の物理的距離が離れた状態では、特に重要です。スラックのようなオンラインコミュニケーションツールが重要な役割を果たしてくれます。
研究プロセスの透明性を担保するためにもう一つ重要なのは、問題の現場の当事者に、自分たちがどのような目的・関心を持って何をしようとしているのかということをじゅうぶんに説明し、同意を得ること(インフォームド・コンセント)です。また、プロセスを公開する際には、当事者の置かれた状況に配慮する必要もあります。
これらは、当事者の信頼を醸成するために不可欠です。(『環境問題を解く』より)

対話&共話

  • 対等な立場で互いの意見を聞き、相互に理解を深める配慮をしているか?
〔 解説 〕

信頼を醸成するためには、対話、すなわち対等な立場で互いの意見を聞き、相互に理解を深める必要があります。
ただし、欧米型の対話では、一方が話し終わるまで他方は黙って話に耳を傾けるため、双方の主張は基本的に交わらないのに対し、日本をはじめとするアジア圏では、一方が話し終える前にもう一方が話し始め、また話し終わる前に元の方が話し始め、というように双方が相乗りして会話が進行していく「共話」が特徴的に見られます(ドミニク・チェン『未来をつくる言葉』新潮社、2020年)。(『環境問題を解く』より)

視点の転換

  • 複数の視点から問題を認識し、共有する基盤を創っているか?
〔 解説 〕

例えば主体Xと主体Yで利害が対立したり、関心にへだたりがあったりして、思考停止に陥りかけている時には、視点を転換して(ずらして)、複数の視点から問題を認識して共有する基盤、いうなれば「とりつくしま」=Zをつくります。
とりつくしまに至る経緯は複数あってかまいません。(『環境問題を解く』より)

〔 引用するには 〕

総合地球環境学研究所オープンチームサイエンスプロジェクト(2021)オープンチームサイエンス・メソッドについて. https://openteamscience.jp/method/ (〇〇年○月○日アクセス)