地球研、所長裁量経費グループ研究「風土プロ」×コミュニケーション部門「知の共創セミナー」による勉強会が開催されます。当日はプロジェクトメンバーである宮田晃碩さんによる報告と自由討論です。
日時:11月12日(月)10:00~12:00
会場:総合地球環境学研究所 セミナー室3,4 ⇒アクセス
主催:所長裁量経費グループ研究「風土プロ」×コミュニケーション部門「知の共創セミナー」
言語:日本語
報告者:宮田晃碩
報告タイトル:風土が語るとき -石牟礼道子『苦海浄土』と和辻哲郎の倫理学
When the milieu speaks Ishimure Michiko’s Kugai jōdo and Watsuji Tetsurō‘s ethics
要旨:風土が破壊されるということを、我々はどのように捉えればよいのでしょうか。風土というのがただ客観的に捉えられる「自然」ではなく、また人間の恣意的に作り出した「文化」でもないとすれば、それはどのように接近され、理解されるべきものなのでしょうか。そのことを私は、石牟礼道子『苦海浄土』を具体的な手がかりとして、和辻哲郎の倫理学を参照枠としながら考察したいと思います。
『苦海浄土』は水俣病に取材した作品ですが、これは単なるルポルタージュではなく一個の文学作品です。そこに収められた患者の人々の語りは、病の苦しみや悲惨だけでなく、同時に水俣での生活がいかに豊かな美しいものであったかを伝えます。
和辻哲郎は『風土』の著者としても有名ですが、今回主に取り上げるのは、その背景にある彼の倫理学、特に「表現」の概念です。和辻の思想においては、表現の主体は決して「個人」ではなく「間柄」としての人間です。この観点から「風土」の概念も理解する必要があります。
『苦海浄土』に表現された「風土」をどのように理解することができるのか、そこで患者の人々や著者石牟礼の語りはどのような位置を占めるのか。このことが本報告の問題関心です。