プロジェクトの目的
このプロジェクトは京都市にある大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所(地球研)のコアプロジェクトとして活動しています。地球研では多様な要因が複雑に絡み合う環境問題を、さまざまな分野の研究者と、行政や住民をはじめとする社会の多様な人々が連携して解決策を共創する、超学際研究と実践的アプローチに取り組んでいます。これは分野や立場の異なる人々が参加するチーム型の共同研究(チームサイエンス)でもあります。
ところが、もともと持っている知識や価値観、社会経済的地位の異なる人々が集まると、問題そのものに対する認識や、他のメンバーに対する理解にずれが生じてしまうことも珍しくありません。このようなずれは研究がうまく進まない要因ともなります。とはいえ、環境問題への対策は後戻りが利きません。そのため、ずれがあるにせよそれを乗り越え研究を進め、問題を解決に導く必要があるのです。そこでこのプロジェクトでは、環境問題のチームサイエンスに生じるずれを乗り越えるための方法づくりに取り組みます。
プロジェクトの手法
いま、国内外で学術の知識を広く社会に開放するオープンサイエンスの動きが広がっています。また、住民が情報通信技術とオープンデータを活用して地域の課題を自主的に解決するシビックテックの動きは、住民が政策形成に直接参加するオープンガバナンスの実現につながりつつあります。シビックテックでは、さまざまな経験や知識をもつ参加者の自由で斬新な発想から、思いもよらない解決策が生まれることがあります。
このプロジェクトでは、この手法をびわ湖の水草対策などの実践研究に取り入れて、多様な主体の参加と対話、「声の小さい」ひとびとへのエンパワーメント(権限付与)、データの公正な可視化などを実施します。これらを通じてチーム内のずれを乗り越えるために、目標をずらしながら問題の解決をめざします。そしてずらしの効果を検証するために、メンバーの意識がどのように変わったかをインタビューやアンケートにより測定する方法も開発します。プロジェクトを通して、オープンサイエンスと地球研が取り組む超学際研究およびチームサイエンスの理論を融合させ、オープンチームサイエンスの新しい方法論をつくっていきます。
概念図:オープンサイエンスとチームサイエンスの理論を融合します
写真:グラフィックレコーディングによる話し合いの見える化(作・あるがゆう)